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平均線膨張係数/光学・技術用語解説

平均線膨張係数とは?

定義

”平均線膨張係数”とは、ある温度範囲にわたって物体がどれくらい伸び縮みするかを平均的に示した数値です。

式で表すと:

              △L(長さの変化量)
α(平均線膨張係数)=ーーーーーーーーーーーーーーーーー
           L₀(元の長さ)×ΔT(温度変化の幅)

  • L₀:初期の長さ
  • ΔL:長さの変化量
  • ΔT:温度変化の幅

単位:1/K(≒ µm/m·K)


と、調べたら簡単に出る時代ですが…言われた所で文系の私にはまったく理解できません。
そりゃ定義は分かりますよ。
ただそれが自分のモノになるかどうか?使えるか?はまた別の話です。

簡単に言いますと…
「温度が1℃変わると、1メートルの棒が何マイクロメートル伸び縮みするか」を示す数値。

ただ…研削研磨もそうですが、やっぱ理解しないと覚えれないんですよ。

ですので!これを!分解して!説明するのが研削研磨ドットコムです!!
本当に分かってないので、疑問を全て調べる所から…なので恐らく大幅に「脱線」します🚃

はい。ではまず、基礎的な所からもう一度。

平均線膨張係数とは、1℃で、1mが何μm伸び縮みするか。
例えば7×10⁻⁶/Kであれば「1℃あたり1mが7μm動く」という意味です。


10⁻⁶??
この「10⁻⁶」は指数表記で、マイナスの1/1,000,000=100万分の一、つまりµmです。
これがもし「10⁻⁵」であればマイナスの1/100,000、10万分の一、つまり10μmです。

/K??
/Kは(1℃あたり)…のKとはKelvinの事で「熱力学温度(絶対温度の単位)」です。

我々が使う℃ってのCselsiusの事でセルシウス温度と言います。
現在では定義によってはK=℃のようです。
えぇ……KなんてスーパードクターKしか知らないっすよ…
これを調べると、

セルシウス(℃):水の氷点と沸点を基準にした温度を唱える

ケルビン(K):絶対零度(-273.15℃)を基準とした温度を唱える。初代ケルビン男爵

セルシウスは我々に馴染み深くて分かりやすい。沸点が100℃で氷点が0℃。
ケルビンは、ほんと何を言ってるんだ…絶対零度って氷河かよ。

・絶対零度とは熱力学的な理論上の限界温度であり、これ以上温度を下げることができない状態を示します。
聖闘士星矢における意味:水瓶座の聖闘士(セイント)が使うワザで氷河とカミュの聖戦は記憶に新しい

更に更に脱線すると、ケルビン男爵の明言は
「”If you cannot measure it, you cannot improve it.”(測定できなければ改善できない)」

との事…いやはや深い、何事もその通りですね!

そのケルビンは絶対零度=-273.15℃=0Kと考えたんです。
絶対零度は「原子の運動エネルギーがこれ以上下がらない状態」。
物理的にこれより低い温度は存在できない=0K。
つまりケルビン温度(K)には0以下は存在しません。
具体的に行くと…

℃とKの対応表
セルシウス温度 (℃)ケルビン温度 (K)
−273.15 ℃0 K(絶対零度)
−272 ℃1.15 K
−100 ℃173.15 K
0 ℃273.15 K
1 ℃274.15 K
100 ℃373.15 K


つまり、表記は違えどその1℃と1Kの差は同じとなる訳です。

ちなみにこれを1848年辺りに話し合ってるんですよ。
今から177年前ですよ??ケルビンもセルシウスも頭の中どうなってるんですか。

ふぅ…大幅に脱線しましたね。
さて脱線した話を元のレールに戻します🚃

身近な平均線膨張係数

  • 夏に鉄道のレールが伸びる。
  • 熱湯を注いだガラス瓶が割れる。

脱線がここに繋がるんですね!
電車のレール(鉄鋼)の平均線膨張係数は約10〜12.5 ×10⁻⁶/K(20〜100 ℃付近)
つまり、1℃で10μmは動く感じ。なんだ大した事ないじゃん?って思うかもですが、昔のレールは約25m。

= 12×10⁻⁶ × 25 m × 40 ℃
= 12mm(約1.2cm)

40℃の変化で1.2㏄mの動きがあります。ちなみに…今のレールの長さは200m~1,200mクラスです。
ええ?そんな長さだと平均線膨張係数的には危険なのでは?素材変えた?と思うのですが
今長さを長く出来るのは…素材を変えたからではありません。

じゃあ何を変えたのか?施工方法を変えたとの事。
・つなぎ目を溶接し、つなぎ目自体がほぼ消えた。
・ストレスフリー温度(無応力温度)30~35℃くらいの膨張した状態で調整、固定する事で伸縮を吸収した。
・結束具の改良・レールは枕木に金具で付けられ、下には大量の砕石(バラスト)で支えています。摩擦と重さでレールが動かないように抑えつけた。

いやはや技術の進歩は凄いですね。

光学系での重要性

そしてやっと本題です…。
温度変化で形が変わるという事は…超精密レンズやミラーなどでは大敵です。

  • 焦点がズレる
  • 画像がぼやける
  • 高精度装置では致命的な誤差になる

などの影響が出ます。
特にナノメートル精度を求める半導体露光や望遠鏡では超重要な値となります。

簡単に言えば…
「レンズや露光装置では温度で形が変化すると困るから“膨張率の小さい材料”が選ばれる」ってことですね。

材料ごとの比較例(代表値)

材料平均線膨張係数(10⁻⁶/K)温度範囲備考
合成石英約0.5~0.60~100℃超低膨張、紫外〜深紫外で高透過、精密光学に最適
光学ガラス BK7約7.1−30〜+70 ℃汎用光学材料
アルミニウム合金約2320〜100 ℃付近構造材だが精密光学には不向き
ZERODUR約0 ± 0.0200–50 ℃, Class 0望遠鏡・半導体露光機に使用

これでいくと、石英は1℃辺り0.5~0.6µm、B7は7µm、ゼロデュアは0.02µmとなる訳です。

確かに研削研磨でµm以下の精度にしても、温度でサクッとズレられたら厳しい。

調べながら…でしたけどこの認識であってるかと思います。
違うよ!というご意見ございました遠慮なくお知らせください。

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